親父の車遍歴:番外10(フェアレディZ(Z32)編【後編】:Zの伝説はここから始まりました。)
Contents
1.はじめに
本編(その9):ローレル(C33)編で、バブルの時代に輝いていた日産車たちをご紹介しました。その中から、完璧なスーパースポーツカー「4代目フェアレディZ(Z32):以下Z32」と、私は少し違うと思っていましたが、一応当時ライバルいわれていたトヨタの「スープラ」を、【前編】【後編】の2回に分けてご紹介をしたいと思います。
前回【前編】では、ライバル(?)の「スープラ」を中心にご紹介しましたが、今回【後編】では、「フェアレディZ:以下Z」の原点ともいえる「初代フェアレディZ(S30):以下S30」と、「Z32」の正常進化ぶりをご紹介したいと思います。
なお本ブログは、私のつたない昔の記憶と、定期購読誌「国産名車コレクション」、「名車文化研究所」や自動車メーカーなどのサイト、を参考にして書いていることをご承知おきください。
2.「S30」のご紹介
2-1)「S30」誕生
「S30」は1969年10月にデビューしました。それまでの「フェアレディ」は、(番外2)でご紹介した「SR311」に代表されるオープンカーのスパルタンなモデルでした。
それに対し「S30」は、ロングノーズ、ショートデッキのクローズドボディの流麗な2ドアクーペで、こちらも(番外2)でご紹介した「トヨタ2000GT:以下トヨ2」を彷彿させるようなデザインでした。
デビュー当時のグレード体系は、「Z」「Z-L」「Z432」の3グレードで、一番廉価な「Z」は100万円を切る超破格な価格設定でした。ただ次項でご紹介する「Z432」だけは、「トヨ2」の200万円を超えるほどではないものの、200万円に近い価格設定でした。
「S30」は、国内はもちろんのこと、そのスタイル、性能、価格で北米市場で爆発的な人気を博し、これは称賛の意味を込めてだと思いますが、「プアマンズ ポルシェ」などと呼ばれていたようです。
2-2)「S30」の最高峰「Z432」
2-2-1)「GT-R」ほどでは
「Z432」は前述の通り、「S30」の中でも群を抜いた最上級グレードですが、その名の通り4つのバルブ、3つのキャブレター、2つのカムシャフトを有する「ハコスカ GT-R」「ケンメリ GT-R」に搭載されていたあの名器、2リッター直列6気筒DOHC「S20」エンジンが搭載されていました。
「Z432」は「GT-R」と違い、オーディオやヒーターなどの快適装備を備えていましたが、「Z432R」というレース専用モデルも用意されていました。ボンネットにはFRP、ボディ外板は基準車より薄く、フロントガラス以外はアクリル化し、100kg以上も軽量化したサーキットしか走ることが許されないモデルだったようです。
「Z432」はもちろんレースに参戦し、内輪のライバル「ハコスカGT-R」を打ち負かして優勝を収めたりもしましたが、「ハコスカGT-R」ほどは活躍できなかったようです。そしてよりチューニングがしやすかった輸出用の2.4リッターSOHC「L24」エンジンを搭載した「240Z」に早々とバトンを渡し、レースの世界から姿を消していきました。
2-2-2)縦2本のエギゾーストパイプ
次項でご紹介する「240ZG」と違い、「Z432」の外観は他のグレードとほぼ同じでしたが、縦に2本並んだ精悍なエギゾーストパイプが、他のグレードと異なる点でした。
学生時代、なぜか生協の裏の駐車場に、この縦に2本並んだエギゾーストパイプの「S30」が毎日止まっていました。車にすこぶる詳しい友人がそのエギゾーストパイプを見て、これは「Z432」だ、と即座に見抜きました。
それからは、みんなでどんな人が乗っているのだろうと気にしていると、なんと生協でレジを打っているお姉さんが、その「Z432」にさっそうと乗り込み、普通の「S30」とは違う音を発しながら走り去っていくのを目撃しました。いまだにそのお姉さんが、何物だったのかは誰にも分っていません。
2-3)超ロングノーズの「240ZG」
2-3-1)Gノーズ
前述の通りレースの世界では主役の座についていた「240Z」が、1971年10月に国内にも投入されました。そのときには、輸出用モデルには設定の無かったGノーズという190mm長いノーズと、「GT-R」ばりのオーバーフェンダーを装着した「240ZG」が設定されました。
そもそも流れるようなデザインの「S30」が、このGノーズによりさらにシャープで力強いデザインに進化しました。空力性能を現すCd値も0.37と大幅に向上し、最高速度は「Z432」と同じ210km/hに達していました。
一方で、ただでさえロングノーズで、フロントエンドが確認しずらい「S30」のノーズを190mmも伸ばしたので、きわめて取り回しが難しかったようです。
同じロングノースでも我が愛車「ケンメリ」の場合は、フロントエンドがスパッと切り落とされているので、ボンネットの先端=ボディの先端ということで、見かけによらずとても取り回しがいいのです。
2-3-2)やはりニセ物が
(番外4)で「ケンメリGT-R」のニセ物が、街中に溢れていたというお話をしましたが、ご多分にもれず、「240ZG」のニセ物もたくさん走っていました。ただ「ケンメリGT-R」と違い、そこそこの台数が販売されていたので、走っている「240ZG」のほぼ全数がニセ物ということはありませんでした。
当時カーショップに行くと、ニセ物を仕込むための「ケンメリGT-R」のフロントグリルと、「240ZG」のGノーズが、必ずといっていいほど売っていました。「ケンメリGT-R」のフロントグリルはそのまま交換すれば終わりでしたが、「240ZG」のGノーズは生地色だったので、ボディに合わせて塗装をする必要がありました。
2-3-3)マウスまでが
少しだけ脱線しますが、私は現役時代に「240Z」のそっくりさんマウスを使っていました。Gノーズが付いていないのにオーバーフェンダーが付いているといった、ちょっと中途半端な仕様でした。ただボンネットにスクロール用のホイールが付いている以外はとても忠実に再現してあり、まじめに仕事をしていても、まるでミニカーで遊んでいるように、周りには映ったのではと思います。
2-4)2台とも排ガス規制の犠牲に
以上ご紹介した「Z」の伝説の礎を造った「S30」の両巨頭「Z432」と「240ZG」ですが、残念ながら昭和48年排出ガス規制をクリアすることはなく、1973年のマイナーチェンジで姿を消しました。
「Z432」の国内販売台数は約400台、「240Z」は約5000台(内「240ZG」の台数は不明)と、「240Z」が「Z432」の10倍以上の販売を記録しています。理由としては販売価格が30万円ほど安いのと、特に「240ZG」はその一目で分かる外観にあったのかなと思います。
それにしても、いきなり5ナンバー車の倍以上になる当時の3ナンバー車の税金を考えると、「240Z」の販売台数は驚異的な数字だったといえます。
3.「Z32」のご紹介
3-1)正常進化
「Z32」は1989年7月に国内市場にデビューしました(北米はその2ケ月前)。それまでの「Z」は3代に渡り、「S30」から始まるトラディショナルなスポーツカーの定番であるロングノーズ、ショートデッキ、直列6気筒エンジンを踏襲してきました。
それに対し「Z32」は、今の時代にもっともふさわしいスポーツカーはこうあるべき、といわんばかりに、キャビンフォワードのワイド&ローデザインに、V型6気筒エンジンを搭載し、伝統の「Z」を正常進化させました。
3-2)上限280馬力
エンジンは、V型6気筒DOHC「VG30DE」エンジンと、V型6気筒DOHCツインターボの「VG30DETT」の2機種を選ぶことができ、特に「VG30DETT」は国産エンジンの最高馬力となる280馬力を誇りました。
そして「史上最強のスカイライン(R30 RSターボ)」あたりから火が付いた「パワー戦争」も、この「Z32」の280馬力がとどめを刺す形となり、これからしばらくの間は、上限280馬力の自主規制を余儀なくされました。
3-3)最も美しい2by2
「Z」は2シーターに加え2by2があるのが、「S30」から続く特徴のひとつですが、ロングノーズ、ショーとデッキがゆえに、2by2モデルはルーフを伸ばすだけでは後席の方の頭が収まらず、ルーフエンドに向かうラインに角(かど)がついていました。
それはそれで一目で2by2分かるデザインといえばそれまでですが、2シーターの流れるようなフォルムに比べると、少し気なる点ではありました。
それに対し「Z32」は、前述の通りキャビンフォワードのデザインを採用しているので、2by2も2シーターと同様のルーフエンドまで流れるようなフォルムになっていました。パットと見ただけでは2シーターも2by2も見分けがつかず、ガソリンの給油口の位置の違いで初めて判別することができました。
4.各車の主要諸元
「S30」の「Z432」「240ZG」と、「Z32」の主要諸元を下表にしまします。エンジンこそ違えども「Z432」と「240ZG」の性能は、当時の国内最高水準でした。それに対し「Z32」は非公表ですが、とあるカー雑誌が、スピードリミッターを外してテストコースで計測した結果によると、最高速度は250km/hオーバー、0-400m加速は14秒以下という、とてつもない性能だったと記憶しています。
これらの性能は、まさに「Z」がその時代時代を代表するスポーツカーであったことを物語っています。
5.おわりに
以上が、【前編】【後編】の2回に渡る「Z」と、そのライバル(?)の「スープラ」のご紹介になります。
「Z」は、2000年9月に「Z32」の販売が終了し、一時休止を余儀なくされましたが、その後復活し、現在では6代目「Z34」の【後期型】となっています。届け出上の都合で「Z34」の型式のままですが、実質的には「Z34」の【前期型】とはまったく別物で、今回ご紹介した「S30」と「Z32」の面影を踏襲した、素晴らしいモデルに仕上がっています。
価格も「Z」の伝統に従い(?)、最新型「GT-R」のような法外な設定ではありません。半導体の供給不足などの影響で、受注が止まったりしているようですが、一日も早く安定供給ができるようになり、ふたたび「Z」の時代がやってくることを心待ちにしています。
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