親父の車遍歴:番外4(ハコスカ・ケンメリ GT-R編【後編】:当時はニセ物がずいぶん走っていました。)

2023年7月24日

1.はじめに

 前回(番外3)ハコスカ・ケンメリ GT-R編【前編】では、ハコスカ「GT-R」と、当時レースでしのぎを削りあっていた「マツダ 初代サバンナ:以下サバンナ」をご紹介しました。今回(番外4)ハコスカ・ケンメリ GT-R編【後編】では、ケンメリ「GT-R」と、当時街中にあふれ返っていたそのニセ物についてお話ししたいと思います。

前回(番外3):ハコスカ・ケンメリGT-R編【前編】
前回(番外3):ハコスカ・ケンメリGT-R編【前編】

 なお本ブログは、私の子供のころの記憶と、定期購読誌「国産名車コレクション」、「名車文化研究所」や自動車メーカーなどのサイト、を参考にして書いていることをご承知おきください。

2.ケンメリ「GT-R」

2-1)生産台数はわずか197台

 ケンメリ「GT-R」はケンメリのフルモデルチェンジ(1972年9月)から4ケ月遅れて発売されました。そしてよく知られている話ですが、その直後に施行された「昭和48年排出ガス規制」をクリアすることができず、わずか197台(市場には195台)しか生産されていない、超希少車です。

 短命だったこともあり、1972年の東京モーターショーでケンメリ「GT-R」のレーシングカー仕様のプロトモデルが出展されていましたが、サーキットでその姿を見ることはありませんでした。

ケンメリ「GT-R」外観(NISSAN MODEL CAR COLLECTION ミニカー)
ケンメリ「GT-R」外観(NISSAN MODEL CAR COLLECTION ミニカー)

2-2)ニセ物が横行

2-2-1)ニセ物レベル1

 前述の通りケンメリ「GT-R」は、197台しか生産されていない超希少車でしたが、私の学生時代の昭和50年代(1975年~1985年)には、街中でケンメリ「GT-R」らしき車を結構見かけました。もちろんほぼ100%がニセ物で、そのニセ物レベルもいろいろありました。

 まずはボディを切ったり穴をあけたりせず、車検を問題なく通せる範囲での一番簡単にできるニセ物です。交換箇所は下図の、①フロントグリル、②エンブレム、③フェンダーミラー(こちらは交換ではなく黒塗装する場合もありました)、となります。ただ難点は、横から見ると「GT-R」の特徴であるオーバーフェンダーがついていないので、すぐバレることでした。

NISSAN MODEL CAR COLLECTION ミニカーを拡大
備考:NISSAN MODEL CAR COLLECTION ミニカーを拡大(画質が悪くてすいません。)

2-2-2)ニセ物レベル2

 次はいよいよボディに手を加えるニセ物です。まずはトランクエンドに穴をあけて下図の、④リアスポイラー、を取り付けます。次に前後のフェンダーのタイヤハウス周りを切り取り、下図の、⑤オーバーフェンダー、を取り付けます。

 ここまでやると、パッと見はほぼ「GT-R」のニセ物になりますが、オーバーフェンダーにより全幅が変わるので車検が通らなくなります。

NISSAN MODEL CAR COLLECTION ミニカーを拡大
備考:NISSAN MODEL CAR COLLECTION ミニカーを拡大(画質が悪くてすいません。)

 陸運局に構造変更申請(正式には構造等変更検査)をしておかないと、車検のときにせっかく取り付けたオーバーフェンダーを取り外すことになります。車検が終わってからまた元に戻せばいいのですが、下図の真ん中のように、車検直後でえぐられたフェンダーにリベット穴を残した無残な状態で走っている二ぜ物を、たまに見かけることがありました。

ケンメリ「GT-R」のニセ物のオーバーフェンダー
ケンメリ「GT-R」のニセ物とノーマル仕様の
リアフェンダーのイメージ(パワポで作成)

 いさぎよく構造変更申請する場合は、どうせ申請するならと、エンジンをボアアップしたり、ソレックスやウェーバーなどの高性能キャブをつけたりして、さらなるパワーアップを図っていましたが、ここまでくると専門ショップの領域になってきます。

 現在旧車市場で出回っているケンメリは、このような専門ショップが手掛ける「GT-R仕様」が多くあり、ニセ物とは呼べないほどの仕上がりで、結構なお値段で取引されているようです。

2-2-3)ニセ物レベル3

 【前編】でも少し触れましたが、私の本物とニセ物の見分け方は、ガラスの色を見ることでした。「GT-R」は無色透明なガラス、ニセ物は青みがかった着色ガラスなので、比較的簡単に見分けることができました。ただごく稀ですが、下図の、⑥無色ガラス、に交換されるケースもあったようでした。

 さすがに後述の傑作エンジン、下図の、⑦「S20」、に乗せ換えるケースは聞いたことがありませんでしたが、その気になればハコスカ「GT-R」のエンジンを移植することは不可能ではないので、どうしても本物への思いが立ちきれない方は、大枚をはたいてやられていたかもしれません。

NISSAN MODEL CAR COLLECTION ミニカーを拡大
備考:NISSAN MODEL CAR COLLECTION ミニカーを拡大(画質が悪くてすいません。)

 以上のニセ物については外観のみに触れていますが、内装においては、アルミ化粧板のインストパネルとセンターコンソール、バケットシート、ハンドル(GT-Xはハンドルごと交換、GTはセンターホーンのみ交換)、内張りの色、などなど、足回りにおいては、コイルスプリング、ショックアブソーバー、リアスタビライザー、リアディスクブレーキ、などなど、みなさん、お金の許す範囲でニセ物を堪能されていました。

3.各車の主要諸元

3-1)少しだけ大柄になったケンメリ

 「GT-R」はケンメリになって、大きくて重くなったとよく言われます。下記主要諸元の通り、確かに各数値は少しづつ大きくなっています。ただそれ以上に、ケンメリのハードトップのファストバックスタイルのCピラーが、よりケンメリを重々しく感じさせてしまったのかなと思います。

ハコスカ、ケンメリ「GT-R」、「サバンナ」の主要諸元

3-2)究極のエンジン「S20」

 「GT-R」といえば、ハコスカもケンメリも、究極のエンジン「S20」が搭載されています。「S20」は、レースで大活躍した「R380」のエンジン「GR8」のデチューン版とよく聞きますが、シリンダーヘッドを流用している以外は、ほぼ新規に設計されたようです。

 ソレックスの3連キャブレター「3連キャブ」で瞬時に大量のガソリンを気化し、シリンダーヘッドに2つのカムシャフト「DOHC:Double Over Head Camshaft 」を配し、吸排気各々2つのバルブ、計4つのバルブ「4バルブ」を直接駆動して、極限までエンジンパワーを引き出すという、当時最高のメカニズムを有していました。

(番外2):フェアレディ&トヨ2編
(番外2): 
フェアレディ&トヨ2編

 以前のブログでご紹介した「トヨタ2000GT」ですら、「3連キャブ」「DOHC」でしたが、吸排気各々1つのバルブ、計2つのバルブ「2バルブ」で、当時の国産車のDOHCエンジンで「4バルブ」を採用しているのは「S20」のみでした。

 下図の通り「2バルブ」に対して「4バルブ」にすると、メカニズムは複雑になりますが、バルブ総面積が大きくなり、より多くの量の吸排気が可能となり、効果的にエンジンのパワー引き出すことができました。

2バルブと4バルブエンジンのシリンダーヘッドのイメージ
2バルブと4バルブエンジンのシリンダーヘッドのイメージ(パワポで作成)

 ちなみに、今でこそ「ツインカム」という言葉が普通に使われますが、これは1980年に差し掛かるころからトヨタが使い始めた「DOHC」エンジンの愛称のようなものです。

 日産は「6代目スカイライン(R30)」の「RS」に搭載された「FJ20DE/ET」エンジンまでは「DOHC」を貫いていましたが、当時の「ハイソカーブーム」に乗って売れまくっていた「5代目マークⅡ(GX71 )」を意識しすぎて、「7代目スカイライン(R31)」から「ツインカム」を使うようになってしまいました。

 個人的には、「S20」から続く伝統の直列6気筒「4バルブ」「DOHC」のメカニズムを受け継ぐ「RB20DE/DET)」エンジンを復活させたタイミングだったので、メカニズムだけではなくその呼称も、時代に流されることなく守り続けてほしかったと思います。

4.おわりに

 以上が、2回に渡るハコスカとケンメリの「GT-R」のご紹介になります。スカイラインの冠は取れてしまいましたが、最新型の「GT-R」の性能は、世界的にみても突出しており、今も昔も「GT-R」は超高性能車の称号であることは変わりありません。

 ハコスカとケンメリの「GT-R」は、当時「GT」の1.5倍程度の値付けでした。それに対し最新型の「GT-R」は年々値上げされていき、いつのまにやらスーパーカーの領域に入ってしまいました。「GT-R」が、いくら背伸びしても庶民にはまったく手が届かない車になってしまったことは、少し残念です。