なぜ年金から特別徴収されないのか?その答えは老齢厚生年金にありました。

1.はじめに

 私は昨年(2023年)に晴れて前期高齢者の仲間入りをし、それまでも年金受給年齢引き上げの移行措置である特別支給の老齢厚生年金は受給していましたが、いよいよ正式(?)な年金の受給が始まりました。

 昨年度は年金受給の開始日の関係から対象にはなりませんでしたが、今年度からはいよいよ、住民税、国民健康保険料、介護保険料、が特別徴収(いわゆる年金からの天引き)の対象になるということで、各通知が届くまでとても気になっていました。

年金・税金・保険の関係
年金・税金・保険の関係
年金繰り下げ受給ケーススタディ
年金繰り下げ受給ケーススタディ

 会社勤めのときは給与からの特別徴収、いわゆる源泉徴収が当り前と思っていましたが、年金で細々と暮らすようになると、最後は同じ財布にいきつくとはいえ、どのぐらい月々の手取りの年金受給額が減るのかは気なるところでした。

 ということで今までにも年金に関しては、繰り下げ受給や、その場合の税金、国民健康保険料との関係をお話ししてきましたが、今回は年金の特別徴収に関するお話をしたいと思います。

2.各通知が届く

2-1)住民税の通知

 まず最初に住民税の通知が届きました。早速中身を見てみると今まで通り普通徴収になっており、下記の通り ”年金からの特別徴収を行う税額はありません” と明記されていました。

(住民税通知書から抜粋)
(住民税通知書から抜粋)

 私の場合、前述の繰り下げ受給のブログの中でも少し触れましたが、日々の生活費は確保しつつ、老後(今でも老後ですが)の収入を少しでも増やすために繰り下げ受給を行うということで、老齢厚生年金のみを受給し、老齢基礎年金は繰り下げ受給するという選択をしています。

 したがって、今回年金からの特別徴収がされないのは、それが理由ではないかと考えて、通知に同封された説明書きを確認してみました。

 すると下記書面の通り、 ”老齢基礎年金等を受給されていて:参照” 、”障害年金、遺族年金からは特別徴収されません:[]参照” と記載されており、老齢厚生年金については特に記載はなく、老齢基礎年金のところには意味深に ”等:黄色い○参照” と記載されていました。

 そしてさらに特別徴収の対象は ”介護保険料が年金から徴収されている人:[]参照” という、なんだか他人のふんどしで相撲を取るような記載もされていました。

 ちなみに、この住民税の通知に関する問い合わせ先は、管轄の区役所になっていました。

(住民税通知書に同封された説明書きから抜粋)
(住民税通知書に同封された説明書きから抜粋)

2-2)介護保険料の通知

 続いて介護保険料の通知が届きました。前述の住民税の鏡(?)になっている通知です。こちらも住民税と同じく普通徴収になっており、その理由は下記書面の通りでとてもクリアで、対象は ”老齢基礎年金、障害年金、遺族年金:[]参照” と明記されていました。ということで、私は老齢基礎年金を受給していないので対象外ということになりました。

 ここでふと気づいたのですが、前述の住民税での記載では
(1)障害年金、遺族年金からは住民税は特別徴収されない
(2)介護保険料が年金から特別徴収されている人が住民税の特別徴収の対象
となっており、その介護保険料の特別徴収の対象となる年金には障害年金、遺族年金も含まれるという不整合が起きていました。

 やはり他人のふんとしで相撲を取ろうとすると、無理が生じるのかなと思いました。

 ちなみに、介護保険料の通知に関する問い合わせ先は市の専用ダイヤルとなっていましたが、この特別徴収に関する問い合わせは年金事務所などとなっていました([]参照)

(介護保険料通知書に同封された説明書きから抜粋)
(介護保険料通知書に同封された説明書きから抜粋)

2-3)国民健康保険料の通知

 そして最後は、金額的に一番大きな国民健康保険です。こちらも住民税と介護保険料と同様に普通徴収となっていましたが、下記書面の通り、現在普通徴収で通知されていても10月から特別徴収になる可能性があり、それは7月中旬にあらためて通知するといった旨が記載されていました([]参照)。

 さらには、”老齢厚生年金を受給されている方でも、下記公的年金が優先されます:[]参照” と、もし老齢基礎年金を受給していない場合は、老齢厚生年金から特別徴収するともとれるような記載がありました。

 ちなみに、この国民健康保険料の通知に関する問い合わせ先は、市の専用ダイヤルになっていました。

(国民健康保険料通知書に同封された説明書きから抜粋)
(国民健康保険料通知書に同封された説明書きから抜粋)

3.正しい特別徴収の対象は

3-1)各通知の結果

 以上2項でご紹介した各通知の内容をふまえると、
(1)住民税:ちょっと微妙な点はあるものの、老齢厚生年金は特別徴収の対象外
(2)介護保険料:老齢厚生年金は特別徴収の対象外
(3)国民健康保険料:老齢厚生年金は特別徴収の対象の可能性あり、その場合は7月中旬に再通知され、10月から特別徴収
ということになります。

 そうなると住民税と介護保険料は普通徴収、国民健康保険料だけ特別徴収ということが起こる可能性があり、なんだかややこしいので、各問い合わせ先に確認してみることにしました。

3-2)国民健康保険料の確認

 まずは、一番混沌としている国民健康保険料の専用ダイヤルに問い合わせてみました。さすが専用ダイヤルだけあって、とても慣れたオペレーターの方が対応され、老齢厚生年金が特別徴収の対象か否かについてお聞きしたいと伝えると、 ”確かに分かりにくいですね、でも詳しくは管轄の区役所にお問い合わせください” とさわやかにたらい回しされました。

 しかたなく管轄の区役所の国民健康保険の担当窓口に問い合わせてみると(この時期は問い合わせが多いようで、なかなかつながりませんでした)、まじめそうな(多分)実務担当者の方が出てこられました。

 先ほどのオペレーターの方とは違い、滑らかさははまったくないものの、忙しい中で一所懸命ご対応いただきました。ただ残念ながら、老齢厚生年金が特別徴収の対象か否かについてはすぐには回答をいただけず、7月中旬の再通知をお待ちくださいといわれました。

 なんだか釈然としないので、せめてそのクライテリアぐらいは教えて欲しいと伝えると、調べてからご連絡します、ということになりました。

3-3)住民税の確認

 次にひょっとしたら住民税も、国民健康保険料と同様に7月に再度通知があるのではと思い、前述の老齢基礎年金等の ”等” を、問い合わせ先である管轄の区役所の担当窓口に問い合わせてみました。

 すると、こちらも実務担当者の方が出てこられ、やはり明確な回答を得られませんでした。ただご担当の方はなかなか正直で、お話ししていてはっきり分かったのは、
(1)特別徴収の対象か否かは年金事務所が決めており、その結果に基づいて区役所は徴収しているだけ
(2)今回の通知は年金事務所からの結果に基づいているので、国民健康保険のように年度の途中で特別徴収に切り替わることはない
ということでした。

 こちらでも、老齢厚生年金が特別徴収の対象か否かは明確になりませんでしたが、なぜ区役所の方がそれを明確に答えられなかったのか、がよく分かりました。

3-4)最後は年金事務所

 そして最後は、どうやら本件の総元締めとなる年金事務所に問い合わせてみようと思いましたが、まずは日本年金機構のホームページをのぞいてみました。

 するとなんと! Q&Aの中に ”老齢厚生年金は特別徴収の対象外(下記留意事項の[]参照)” と明確に記載されていました。今までの苦労はいったい何だったのでしょうか。。。

(日本年金機構ホームページのQ&Aから抜粋)
(日本年金機構ホームページのQ&Aから抜粋)

4.おわりに

 以上が、年金の特別徴収に関するお話となります。

 最後は、なんともあっけない幕切れとなってしまいましたが、住民税も国民健康保険料も、介護保険料を見習って分かり易い文面への早期修正を望みます。まさかこのことを見越して住民税は、介護保険料のふんどしで相撲を取ろうとしているのではないか、と疑ってしまいました。

 そして今回あらためて、まだまだ自治体の各制度の整合が十分とれていないことを実感しました(長い年月の間に、様々な事情を受け止めて制度の補正をされてきたので致し方なしとは思いますが)。

 今後マイナンバーカードに、国や自治体の各制度を統合していこうという流れは十分理解していますが、入念な検証を重ねた上で実施されることを願っています。