我が青春を彩ったクルマたち:番外10(しんがりのロータリー車編【後編】:最後はRX-8でした。)

1.はじめに

 前回【中編】では、一世を風靡したRX-7の最後を締めくくった「アンフィニ RX-7」をご紹介しました。

前回【中編】:アンフィニ RX-7のご紹介ブログ
前回【中編】:アンフィニ RX-7のご紹介ブログ

 今回【後編】では、ロータリー車の最後を締めくくった「RX-8」をご紹介したいと思います。

 なお本ブログは、私のつたない記憶と、定期購読誌「国産名車コレクション」、「名車文化研究所」や自動車メーカーなどのサイト、を参考にして書いていることをご承知おきください。

2.「RX-8」

2‐1)フル4シータースポーツ

 RX-7のしんがりを務めた、3代目RX-7「アンフィニ RX-7」の販売が終了した直後の2003年5月に、1967年から続いたマツダ ロータリー車の最後を締めくくることになる「RX-8」がデビューしました。

 このクルマの大きな特徴は、歴代を通してRX-7はあくまで前席優先、後席はいざというときに使う補助的な位置づけとなる2+2シーターだったのに対し、おとな4人がしっかりと着座できるフル4シーターだったことです。

 これは当時の親会社のフォードからの強い要望に従ったといわれており、その理由はアメリカの自動車保険のスポーツカージャンルの保険料が高いからだとか、フォードが過去に2シーター車で失敗したからだとか、いろいろな説が流れましたが、真意のほどはよく分かりません。

 ただ2+2シーターよりフル4シーターのマーケットのほうが格段に大きく、販売実績を上げやすいことは確かだったのかなと思います。

 そしてこの「RX-8」の特筆すべき点は、マツダの開発者の方々のご努力の甲斐あって、フル4シーターでありながらも、RX-7から引き継いだ流麗なクーペスタイルはそのままで、なんと観音開きの後席ドアを採用することで、一見すると2ドアにしか見えないみごとなエクステリアデザインを実現してる点です。

 観音開きといっても初代クラウンのような、Bピラーを有するフル4ドアのタイプではなく、ホンダの「エレメント」やミニの「クラブマン」のような、Bピラーを持たないハーフドアタイプでした。

 うまいこと考えたものです。

「RX-8」の外観(国産名車コレクション付録ミニカー)
「RX-8」の外観(国産名車コレクション付録ミニカー)

2‐2)未来のロータリーエンジン

 「RX-8」のエンジンは2ローター13B型エンジンで、基本型式は実質的な先代にあたる「アンフィニ RX-7」と同じですが、2基のタービンは外され、自然吸気のみで吸排気ポートの最適化を図ることで、エンジン出力はほぼ同等の250馬力を叩きだしていました。

 そして2006年には、この13B型エンジンをベースに水素燃料エンジンを試作して公道実験を行っています。

 水素燃料はガソリンとくらべて最小点火エネルギーが小さいという特徴があり、レシプロエンジンのように、吸排気バルブがシリンダーヘッドの上に近接して配置されていると、吸気側の温度が上昇しやすく異常燃焼が起こりやすくなるという課題がありました。

 それに対してロータリーエンジンは、排気バルブと吸排気のバルブが離れて配置されているので、その課題をクリアしやすく、その利点を活かして、マツダでは早くから水素燃料エンジンの研究が進められていました。

ロータリーエンジン(左)と レシプロエンジン(右:4サイクル)の断面図のイメージ(パワポで作成)
ロータリーエンジン(左)と レシプロエンジン(右:4サイクル)の断面図のイメージ(パワポで作成)

 そして未来への布石を残しつつも、2013年6月に「RX-8」の販売は終了しました。「RX-8」は、5万台ほどしか販売されなかった実質的な先代にあたる「アンフィニ RX-7」に対して、20万台近くの販売実績を残しており、フォードからのフル4シーター化の要望は正しかったのかもしれません。

3.各車の主要諸元

 ロータリー車のしんがりをつとめた「ユーノス コスモ」「アンフィニ RX-7」「RX-8」の主要諸元を下表に示します。

 2ローター110馬力の10A型からスタートしたロータリーエンジンですが、最後は3ローター280馬力の20B型、さらにはレーシングエンジンでは4ローターまで進化して、その幕を閉じました。

「ユーノス コスモ」「アンフィニ RX-7」「RX-8」の主要諸元

4.おわりに

 以上が、ロータリー車の最後を締めくくった「RX-8」のご紹介となります。

 【前編】【中編】【後編】の3回に渡り、華々しくデビューしたロータリー車たちのしんがりを務めた3台のロータリー車をご紹介しましたが、コスモは29年間、RX-7は25年間、そしてロータリー車は46年間に渡り販売されました。

 そして国内のみならず世界中の人々に、ロータリーエンジンならではの爽快な加速感、ロータリーエンジンのコンパクトで軽量な特徴を活かした理想的な重量配分による、人馬一体となったクルマを操る喜び、を教えてくれました。

マツダ ロータリー ストーリー
マツダ ロータリー ストーリー

5.その後のロータリー車(追記)

 マツダは、いろいろと訳あって長年連れ添ったフォードと2015年に完全にお別れをし、現在ではトヨタとの資本提携はあるもの、「Zoom-Zoom」というブランドメッセージを掲げ、時間をかけて車種から販売チャネルに至るまでの一貫したブランドの再構築を図り、今では唯一無二の自動車メーカーとなっています。

 そして2023年に、PHEV(プラグインハイブリッド)の発電機として、コンパクトで高出力なロータリーエンジンが採用され、「MX-30 Rotary-EV」に搭載されました。新しいロータリー車の時代の幕明けです。

 うまくいかないと人のせいにし、うまくいくと自分のお手柄にする、ということが横行しているこのご時世で、自分が選んだものをいつまでも信じ続け、そして必ず花開かせるというマツダには、本当に頭が下がります。

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