親父の車遍歴:番外8(シルビア(S13)編【後編】:打倒「プレリュード」に燃える。)

2024年2月23日

1.はじめに

 本編(その9):ローレル(C33)編で、バブルの時代に輝いていた日産車たちをご紹介しました。その中から、当時の若者の心を鷲づかみにした「5代目シルビア(S13) 」と、当時ライバル関係にあったホンダの「プレリュード」を、【前編】【後編】の2回に分けてご紹介をしたいと思います。

本編(その9):ローレル編
本編(その9):
ローレル編
前回【前編】:「プレリュード」のご紹介
前回【前編】:
「プレリュード」
のご紹介

 前回【前編】では、「プレリュード」をご紹介しましたが、今回【後編】では、「歴代シルビア」と、「5代目シルビア(S13) 」と「3代目プレリュード」とのバトルについてご紹介します。

 なお本ブログは、私のつたない昔の記憶と、定期購読誌「国産名車コレクション」、「名車文化研究所」や自動車メーカーなどのサイト、を参考にして書いていることをご承知おきください。

2.「シルビア」の歩み

2-1)初代

 「初代シルビア(CSP311):以下初代」は、1965年4月に「フェアレディ1500」をベースとした超高級な元祖スペシャリティーカーとしてデビューしました。エンジン出力は90馬力で、最高速度は165km/hと、当時としては高性能な部類に属していましたが、その特徴はなんといっても、ドイツ人デザイナーのアルブレヒト・ゲルツ氏の指導の下で開発された、「クリスプカット」と呼ばれる、なんとも高貴なエクステリアデザインでした。

(番外2):フェアレディ&トヨ2編
(番外2):フェアレディ&トヨ2編

 (番外2):フェアレディ&トヨ2編で、空想特撮ドラマ「ウルトラQ」に登場するオープンカーを、50年以上も勘違いしていたというお話をしましたが、実はこの「クリスプカット」のことも、50年以上も「クリスタルカット」と勘違いしていました。

 まるで美しくカットされた水晶のようなデザインということで、「クリスタルカット」というのはとてもしっくりきていましたが、本ブログを書くために念のため調べてみると、残念ながら文字数まで違うという大きな勘違いでした。

「クリスプカット」デザイン
「クリスプカット」デザイン

 ちなみに「クリスプカット」の意味ですが、いろいろ調べてみてもいまいちよく分かりません。「クリスプ」にはいろいろな意味がありますが、その中のひとつである「張りのある,輪郭が明確な,くっきりした」のようにカッティングされたデザインという解釈が、正しいのかなと思いました。

2-2)2代目

 「2代目シルビア(S10):以下2代目」は、少し空白期間をおいて1975年9月にデビューしました。もともとはロータリーエンジンの搭載を前提に開発が進められていたそうですが、オイルショックとなり燃費の悪いロータリーエンジンが敬遠されがちだったので、急遽レシプロエンジンに変更されてデビューしています。

「ハマグリ」のイメージ(パワポで作成)
「ハマグリ」のイメージ
(パワポで作成)

 「サニー(B210)」がベースとなっており、ボディサイズは少し小ぶりで、当時のスペシャリティカーの代名詞ともなっていた、トヨタの「初代セリカ」に比べると見劣りしていました。ただエクステリアデザインやインテリアデザインは、「初代」の血筋を引き、なかなか洗練されていました。

 特にエクステリアデザインは、ロータリーエンジンの搭載を前提にデザインされただけあって、なかなか前衛的な宇宙船のようなデザインでした。面と面を巧みに重ね合わされており、ちまたでは「ハマグリ」とも呼ばれていました。

2-3)3代目

 「3代目シルビア(S110):以下3代目」は、1979年3月にデビューしました。ウェッジ基調のシャープなボディラインのエキステリアデザインや、なかなかセンス良くまとめられたインテリアデザインで、あっという間に人気モデルになりました。

「3代目シルビア」のタイヤが内側に収まるリアビュー
「3代目シルビア」のタイヤが内側に収まるリアビュー
(パワポと国産/日産名車コレクションミニカーで作成

 ボディサイズも先代より一回り大きくなり立派になったのですが、ベースモデルが「サニー(B310)」で、1680mmという全幅に対し、トレッド(左右の車輪の接地中心点間の距離)が1345mmしかなく(今回の主役である「5代目シルビア(S13)」は1690mmの全幅に対し、トレッド(後輪)は1460mm)、タイヤがボディからかなり内側に収まっていたのが、少し残念でした。

 これは当時誰もが気付いていたことであり、みなさんワイドタイヤなどを履くことでごまかしていました。

2-4)4代目

「4代目シルビア」のパワーバルジ
「4代目シルビア」のパワーバルジ(国産/日産名車コレクションミニカー 写真は兄弟車の「ガゼール」)

 「4代目シルビア(S12):以下4代目」のデビューは1983年8月で、先代が人気モデルだったので基本キープコンセプトで、先代より丸みを持たせたエクステリアデザインに変わりました。先代にも搭載されていた「FJ20」エンジンは「史上最強のスカイライン」に搭載されたターボ付きとなり、さらなるパワーアップを図りました。

 この「FJ20」エンジン搭載モデルは、エンジンフードに大きなパワーバルジがついており、とても威風堂々としていましたが、正直「シルビア」伝統の流麗なエクステリアデザインからはかけ離れたものでした。

 そして「4代目」は、スペシャリティカーというには少し微妙な存在になってしまい、前述の「2代目プレリュード」「3代目プレリュード」にまったく歯が立ちませんでした。

勢ぞろいした歴代(5代目まで)シルビア(国産/日産名車コレクションル付録ミニカー)
備考:2代目はいません。4代目は兄弟車の「ガゼール」です。
勢ぞろいした歴代(5代目まで)シルビア(国産/日産名車コレクションル付録ミニカー)
備考:2代目はいません。4代目は兄弟車の「ガゼール」です。

3.老舗のプライド

3-1)打倒「プレリュード」

 前述の通り、「プレリュード」にやられっぱなしの中、1988年5月に「初代」から受け継ぐスペシャリティーカーの老舗としてのプライドを引っさげて「5代目シルビア(S13 ):以下S13」がデビューしました。

 「4代目」のことは一旦リセットし、隆盛を極めていた「3代目プレリュード」に対し、本来のスペシャリティーカーとはこんなんだ!といわんばかりの素晴らしい仕上がりの車でした。

打倒プレリュードに燃えるシルビア
打倒プレリュードに燃えるシルビアのイメージ(パワポと国産/日産名車コレクション付録ミニカーで作成)

3-2)ART FORCE SILVIA

 エクステリアデザインは、曲面で巧みに構成したワイド&ローデザインで、エレガンスさを漂わせる淡い色が似合う芸術品のようなデザインでした。インテリアデザインもインストからセンターコンソールまで曲面的に一体となった、とても洗練されたデザインでした。

「初代シルビア」と「5代目シルビア」の外観(国産/日産名車コレクション付録ミニカー)
備考:両車とも芸術品のようなデザインです。
「初代シルビア」と「5代目シルビア」の外観(国産/日産名車コレクション付録ミニカー)
備考:両車とも芸術品のようなデザインです。
「ART FORCE SILVIA」のTVCMイメージ
「ART FORCE SILVIA」のTVCMイメージ
(パワポと国産/日産名車コレクションミニカーで作成)

 「S13」のキャッチコピーは「ART FORCE SILVIA」で、プロコル・パルムの「青い影」をBGMにして、少しずつ姿を明らかにしていくTVCMは、前回ご紹介した「2代目プレリュード」のバレエ曲「ボレロ」をBGMにして登場するTVCMに勝るとも劣らないインパクトがありました。

 グレード名にもこだわっており、トランプ(アメリカ前大統領ではありません)を意識した「J’s」、「Q’s」、「K’s」といったおしゃれな呼称でした。

3-3)FRスポーツ

 エレガンスさを前面に打ち出していた「S13」ですが、中身は「FJ20」は封印したものの、1.8リッター、DOHC&DOHCターボエンジンのFR(Front engine Rear drive)で、フロント:ストラット、リア:マルチリンクの四輪独立懸架といった立派なスポーツカーでした。

 世の車が、FF主流になってくるとトヨタの「カローラレビン(AE86)」ともに、FRスポーツを気軽に楽しめる車として、「S13」は中古車市場でも現役時代とは違う意味で人気を博しました。

4.各車の主要諸元

 「初代」と「S13」と「3代目プレリュード」の主要諸元を下記に示します。専門的な項目はあえてはしょってあることをご承知おきください。「S13」と「3代目プレリュード」のボディサイズはほぼ同じで、まさに良きライバルであったことを物語っています。

 ちなみに両車の勝負は行方は、「S13」の悲願達成となりました。

各車の主要諸元

5.おわりに

 以上が、【前編】【後編】の2回に渡る「シルビア:主にS13」と、ライバルのホンダ「プレリュード」のご紹介になります。「シルビア」と「プレリュード」はその後も良きライバルとして切磋琢磨を続けましたが、いつのまにやら「デートカー」という言葉は忘れ去られ、両車とも世の中から姿を消していきました。

 この両車は、当時の若者が、夢にまで出てくるほど欲しいと思う車を、みごとに具現化したものでした。そして現在の車離れをしてしまった若者にとっては、車は所有するものではなく、必要なときだけ借りて使う道具、となってしまいました。

 夏休みに入ると東名高速道路が、少し運転のぎこちない若者が運転する「わ」ナンバーの車であふれ返ります。でも車内には、友だちが何人か乗っていて、とても楽しそうです。これも時代の流れです。。。

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