親父の車遍歴:その6(2代目マークⅡ編:親父が迷い抜いて買った車です。)
Contents
1.はじめに
前々回(その4)前回(その5)では、親父が「初代トヨタ コロナ マークⅡ(最初のころは、頭にコロナが付いていました):以下初代マークⅡ」に買い替えて、北に東に西に爆走したときのお話をしました。
そして私たち家族をいろいろなところに連れて行ってくれた「初代マークⅡ」もモデルチェンジの時期を迎え、1972年1月に「2代目マークⅡ」に生まれ変わりました。そうなるとしばらく収まっていた親父の買い替え癖が、姿を現してきました。
今回(その6)では、親父がめずらしく次なる新車をどれにしようか迷い抜いて、結局「2代目マークⅡ」に落ち着いたときのお話をします。時代は私が中学生だった昭和40年代の後半になります。
なお本ブログは、私の子供のころの記憶と、定期購読誌「国産名車コレクション」、「名車文化研究所」や自動車メーカーなどのサイト、を参考にして書いていることをご承知おきください。
2.新車ラッシュの1972年
2-1)なぜか「初代ローレル」が候補に
1972年は、「2代目マークⅡ」が1月に、日産からは「2代目ローレル」が4月に、「4代目スカイライン」いわゆる我が愛車「ケンメリ」が9月に、当時のカテゴリーでいうハイオーナーカークラスの新車が立て続けに発売されました。そんな中で、親父の新車への買い替えアクションは、「2代目マークⅡ」が発売されてすぐに始まりました。
最初は「2代目マークⅡ」のカタログを入手して、ずいぶん大柄で豪華になった「2代目マークⅡ」の仕様などを調べていました。このまま商談に向かうのかと思いきや、親父の買い替えのベクトルは「初代ローレル」にスライスし始めました。前回(その5)でもご紹介した通り、「初代ローレル」は当時親父が乗っていた「初代マークⅡ」と同世代で、まもなくモデルチェンジを迎える車です。
あくまで私の憶測ですが、日産のディーラーに「2代目ローレル」の発売時期がいつなのか探りを入れに行ったときに、「初代ローレル」の破格の値引き額が提示されたのではないかと思います。「初代ローレル」はとても完成度が高い車であったことには間違いありませんが、いかんせんまもなく旧型になる車です。即刻「初代ローレル」候補案は、親父以外の家族全員から総攻撃をくらいあえなく撃沈されました。
2-2)ゆっくり走ろう「ローレル」
そしてまもなくして「2代目ローレル」が発売されました。「初代ローレル」のスーパーソニックラインのクリーンなデザインではなく、アメ車を意識した少しマッチョでグラマラスなデザインでした。
親父は、この機を待ってましたとばかりに私を連れて、日産のディーラーに向かいました。すると武骨な「技術の日産」からは想像もできない、今までのただ新車が並んでいるだけの新車発表会とは一線を画した、なかなかこじゃれた雰囲気が漂っていました。「ゆっくり走ろう」をキャッチコピーに掲げ、会場内に上条恒彦さんが口ずさむ「ゆっくり走ろう、お~お~ローレル」という曲が流れ続け、ゆったりとした気分で新車を見ることができました。
ちなみにこの「ゆっくり走ろう、お~お~ローレル」という曲ですが、このころの上条恒彦さんのヒット曲「旅立ちの歌」か「だれかが風の中で」の中の1フレーズかと思い、あらためて曲を聞き返してみると、どこにも出てきませんでした。どうやら「2代目ローレル」のためのオリジナル曲だったのではないかと思います。(間違っていたらすいません。)
2-3)ケンとメリーの「スカイライン」
「2代目ローレル」のあとを追うように、いよいよ我が愛車「ケンメリ」の発売です。そして親父はふたたび待ってましたとばかりに私を連れて、日産のディーラーに向かいました。こちらも「2代目ローレル」のときと同様に、武骨な「技術の日産」らしからぬ洗練された雰囲気の中で、「いつ~だって、どこ~にいたって」という、BUZZの「愛と風のように」という曲が流れていました。
「2代目ローレル」の上条恒彦さんの歌う曲は、ゆとりのある男のイメージを打ち出していましたが、「ケンメリ」は若い2人の愛をテーマにして車のイメージづくりをしていました。最近の日産は「やっちゃえ」とかいうCMを流していますが、「技術の日産」「販売のトヨタ」といわれていたわりに、このころの日産のマーケティングはなかなか秀逸だったのではないかと思います。
とくに「ケンメリ」のTVCMは全部で16話あり、BUZZの曲をバックにケンとメリーが愛を交わしあうといった、とてもロマンチックなCMでした。ほとんどか海や山や草原(あの有名な美瑛の「ケンとメリーの木」もこの中の一つです)をバックにしているのですが、一話だけお城(たぶん姫路城)をバックにしたCMがあり、妙に新鮮でした。
3.そして「2代目マークⅡ」を購入
3-1)絢爛豪華な「2代目マークⅡ」
親父は「初代ローレル」「2代目ローレル」「ケンメリ」といろいろと迷った挙句に、結局「2代目マークⅡ」を購入しました。
「2代目ローレル」もインテリアには力を入れていましたが、「2代目マークⅡ」の特にラグジュアリーグレードの「L」のインテリアは、当時のこのクラスの車の中では圧倒的な豪華仕様でした。親父はこの豪華さに惹かれて「2代目マークⅡ」を選んだようでした。もちろん奮発して「L」グレードを選びました。
ベージュで統一されたインテリアにファブリック張りのシート、後席のセンターアームレスト、後席の両側についたパーソナルランプ、パワーウインドウ、照明付きSW、オートサーチのFM/AMラジオ、などなど、今では絶滅してしまいましたが、まるで応接間(当時の憧れでした)に居るようなくつろぎを、車の中で味わうことができました。そしてこちらはオプションだと思いますが、当時のお約束のレースのシート半カバーも付いていました。
私と兄貴の指定席である後席は、親父が当時流行りだったハードトップボディを選んだので、乗降は少し面倒くさかったですが、後席に収まった時のつつまれ感はなかなかのもので、豪華なインテリアも相まって、ずっとここに居たいといった気持ちにさせてくれました。
3-2)ボディも大柄に
「2代目マークⅡ」のボディは、ワイド&ローなデザインで、これが私の実家の狭い駐車場に収まるのか思えるぐらい大柄に見えました。ただ実寸は、特に駐車のポイントとなる全幅は「初代マークⅡ」から1.5cmしか広がっておらず、無事駐車場に収まったようでした。
このころ私の実家では、もう少しすると私が高校受験を迎えるということで、有難いことに増築して私にマイルームを与えてもらいました。
3-3)販売実績は各車ほぼ互角
一方で親父が購入を見送った「2代目ローレル」と「ケンメリ」ですが、販売実績では「2代目マークⅡ」と互角以上で、特に「ケンメリ」の販売台数は圧倒的でした。以前も少しお話ししましたが、「ケンメリ」はスカイライン史上最高の約67万台を5年弱の間に売り抜きました。
日産の車は傾向的に(あくまで私見です)、中古車になると元気に走り回る「なんとか族」に好まれるようで、以前「ケンメリ」のシャコタン(今でいうローダウン)についてはお話ししましたが、それに負けじ劣らず「2代目ローレル」のハードトップは、「ブタケツ」という愛称で「なんとか族」に大人気でした。
昭和50年代に差し掛かるころには、新車販売が好調だった分、中古車も多く出回ったので、この「ブタケツ」と「ケンメリ」のシャコタンが、街中にあふれ返っていました。もちろん我が愛車「ケンメリ」はノーマル仕様なので、この類の車が近くに寄ってきたときは、熊に遭遇したときのように、できるだけ目を合わさないようにおとなしく遠ざかるようにしていました。
4.各車の主要諸元
「2代目マークⅡ」と「2代目ローレル」と「ケンメリ」の主要諸元を下表に示します。専門的なスペックは、あえてはしょってあることをご承知おきください。
さきほども少し触れましたが、とても大柄に見えていた「2代目マークⅡ」が、3車の中では一番小さいことが分かります。特に「2代目ローレル」は上級車の「セドリック」に迫るほどのサイズになっています。とはいえ3車のボディサイズに大きな差はなく、3車とも直列6エンジンを搭載し、よきライバル関係となっていました。
このころは、このハイオーナーカークラスに日産が2車種、トヨタが1車種と、日産が優位に立っていました。その後トヨタは、「チェイサー」「クレスタ」を追加して「マークⅡ3兄弟」を形成、日産は「セフィーロ」「マキシマ」を追加し4車種(ほとんど流行りませんでしたが「シンフォニーフォー(4)」と呼んでいることもありました)で、激しく競い合っていました。
そして今ではこのクラスに残っているのは、かろうじて「スカイライン」のみとなっているのは、時代の流れとはいえさみしい限りです。ちなみにトヨタは今でも「カムリ」をこのクラスにラインアップしていますが、もともと「セリカ・カムリ」として「カリーナ」をフェイスチェンジして投入された車なので、あえて外しています。
5.おわりに
以上が、親父が迷い抜いて購入した「2代目マークⅡ」のお話です。その後、私が故郷の岐阜を離れるときに、新幹線の駅の中で今でもローカル度NO.1 を競い合っている「岐阜羽島駅」に送ってもらったのが、「2代目マークⅡ」での最後のドライブになりました。
そして最初の夏休みに帰省したときには、親父の車は我が愛車「ケンメリ」に変わっていました。「ケンメリ」については別のブログで紹介済みで、一部「5代目スカイライン(GC210):以下ジャパン」のお話もしました。
次回(その7)では、その「ジャパン」の話の続きから、その後乗り換えた「6代目スカイライン(R30)」のお話をする予定です。
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