我が青春を彩ったクルマたち:番外4(初代 サニーとカローラ編【後編】:衝撃的なTVCMでした。)
Contents
1.はじめに
前回【前編】では、一足先に発売した「初代サニー:B10」は、クリーンで洗練されたエクステリアデザインと、徹底した軽量化で、"THE大衆車" として見事に仕上げられた、完成度の高いクルマだったということをご紹介しました。
今回【後編】では、プラス100㏄の余裕を引っさげて登場した「初代カローラ:E10」を中心にご紹介したいと思います。コンパクトカーのセオリーに則り実直に造られた「初代サニー」と、時流(?)に乗って、当時のユーザーニーズをしっかりととらえた「初代カローラ」の勝負のゆくえは如何に?
なお本ブログは、私の少年時代のつたない記憶と、定期購読誌「国産名車コレクション」、「名車文化研究所」や自動車メーカーなどのサイト、を参考にして書いていることをご承知おきください。
2.プラス100㏄の余裕
「初代カローラ」は、「初代サニー」の発売から8ケ月遅れて、1966年11月に発売されました。先行する「初代サニー」のエンジンが1000㏄という情報を開発途中で入手し、急遽プラス100㏄の1100㏄エンジンを搭載し、排気量のみならず、あらゆる面で「初代サニー」より余裕があることを前面に押し出していました。

実寸上はそこまでの差はないのですが、「初代カローラ」はそのふくよかなエクステリアデザインと、膨張色を宣伝のメインカラーに選ぶなどして「初代サニー」より、ひと回り大きくゆとりがあるといった印象を受けました。

そして、好調な販売を続ける「初代サニー」を、あっという間に追い抜き、それから大衆車の王者として長きにわたり君臨することになりました。
ただ「初代サニー」の販売も決して鈍ったわけではなく、「初代カローラ」の累計約77万台に対し、45万台近く販売しており、十分に善戦しています。
3.新鮮な4速フロアシフト
「初代カローラ」は発売当初から、スポーツカーばりのフロアシフト(4速ですが)と、丸形2連メーター(タコメーターはありませんが)が実装されており、当時としてはスポーティ風(?)で、とても新鮮に映りました。
コラムレバーをつつましやかに操作するのではなく、フロアトンネルから突き出ているシフトレバーをダイナミックに操作する姿は、なかなかカッコよく映りました。そしてこの「初代カローラ」が先鞭をつけたフロアシフトは、スポーツカーだけではなく、大衆車、小型車にも、あっという間に広がっていきました。

4.車種専用バッチの時代
「初代カローラ」のハンドル中央には上記運転席周りのイラストの通り、発売当初はトヨタの ”T”バッチが付けられていましたが、モデル途中から車種専用バッチに置き換わりました。そしてその後は世の中全体が、車種専用ハンドルに車種専用バッチが付くのがトレンドになっていきました。
その後エアバックの普及とともに、この車種専用ハンドルに車種専用バッチは次第に消えていき、今ではほとんどのクルマが、車種共通のハンドルに車種共通のブランドバッチを付けています。
ちなみに「初代カローラ」のフロントグリルには、発売当初からしっかりと車種専用バッチが付いていました。このフロントグリルのバッチは、代を重ねてデザインは変わっていますが、他車がブランドバッチに置き換わっていく中でも、最新型の「カローラ」には、まだしっかりと付いています。
一方で「初代サニー」は、最初はハンドル中央の”D(ダットサン)"バッチと同じく、フロントグリルにも ”D"バッチが付いていましたが、モデル途中から車種専用の ”S(サニー)"バッチに置き変わりました。

(ミニカーの拡大写真なので画質が悪くてすいません)
5.衝撃的なTVCM
前述の通り「初代カローラ」は、プラス100㏄の余裕を前面に押し出したプロモーションを展開していましたが、TVCMもなかなか衝撃的でした。
確かにエンジン排気を100㏄アップすることで、「初代サニー」より走行性能が少しだけ向上していましたが、その差を前面に出したTVCMが流れていました。
イメージキャラクターに、当時の青春ドラマで人気絶頂だった俳優の竜雷太さん起用し、放たれた矢よりも早く、その的に到達するという、今なら誇大広告で消費者団体から吊るし上げられそうな内容のTVCMでした。

ただこんなTVCMが当り前のように流れていた時代を、とても懐かしく感じます。昭和でした。
そしてプロモーション的には、「初代カローラ」に一方的にやられていた「初代サニー」も、そのうっぷんを晴らすかのように「2代目サニー」では1200㏄エンジンを搭載し、TVCMでは、なんと ”となりのクルマが小さく見えます” と、健康的(太め?)で素朴な少年がささやいていました。
6.コラムシフトとクーペを追加
発売当初は4速フロアシフトのみの設定で、それはそれで市場で受け入れられた「初代カローラ」ですが、世の中には急な変化に追従できない方もおみえになるようで、「初代サニー」の逆になりますが、マイナーチェンジでは4速コラムシフトや、2速のトヨグライド(オートマチックトランスミッション)を追加設定し、さらなるユーザー層の拡大を図りました。
そして本編(その5)でもお話ししたように、「初代サニー」がクーペモデルを追加したタイミングに合わせるかのように、「初代カローラ」もファストバックスタイルのクーペモデルを追加し、「カローラ スプリンター」としてブランドを分けて、別の販売チャネルから売り出しました。
この「カローラ スプリンター」は、ベースエンジンをツインキャブレターで武装した優れた動力性能と、大衆車並みの価格設定で、当時の若者の心を鷲づかみにしたようでした。確かによく見かけました。

7.両車の主要諸元
下表に「初代サニー」、「初代カローラ」と、参考までにそのクーペモデル「カローラ スプリンター」の主要諸元を示します。前述の通り「初代サニー」と「初代カローラ」は、見た目の差ほどは実寸は変わらないのが分かります。
特にプラス100㏄の余裕と大々的に打ち出しておきながら、実際は89㏄で4馬力しか違いません。パワーウエイトレシオは「初代サニー」が11.5㎏/ps、「初代カローラ」が11.8㎏/psと、「初代サニー」の方が優秀です。
「初代サニー」は、発売当初3速コラムシフトしかなかったので、ちょっと苦しかったとは思いますが、4速フロアシフトが搭載されてからは、おそらく車重の軽さと、OHVながら高速域まで気持ちよく吹き上がる名機(A型)エンジンの組み合わせで、最高速度も、0→400m加速も、「初代サニー」の方が勝っていたのではないかと思います(あくまで憶測です)。
ひょっとするとそんな理由から、前述の衝撃的な「初代カローラ」のTVCMが生まれたのかもしれません。

8.おわりに
以上が「初代サニー」と「初代カローラ」のご紹介になります。クルマ本来の魅力と動力性能は、排気量に100㏄(正確には89㏄)の差はあれど、ほぼ互角だったと思います。
たださすが宣伝のトヨタ(当時の話です)ということで、当時の、たとえ大衆車でも他のクルマより余裕がありしかも速い、という高度成長期ならではのユーザーニーズにしっかりと刺さるプロモーションを展開し、みごとに大衆車の王者の座を勝ち取りました。
その後も「サニー」と「カローラ」は、販売台数的には常に「カローラ」が勝っていましたが、良きライバルとして鎬を削り、大衆車市場をけん引していきました。
そして、せっかく一般公募までして決まった「サニー」の名は、今では消えてしまいましたが、「カローラ」は一時は絶滅危惧種になりかけながら、再びモデルラインナップの拡充を図ることで息を吹き返しつつあり、いまでも「カローラ」ブランドは守り続けられています。頑張れトヨタ。
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