親父の車遍歴:番外17(「レパード」&「ソアラ」編【前編】:初代の対決)

2024年2月23日

1.はじめに

 (番外16)で、日本が世界に誇る高級車、「日産 初代インフィニティQ45(以下Q45)」、「トヨタ 初代セルシオ(以下セルシオ)」をご紹介しました。ほぼ同時期に発売された両車ですが、結果は「セルシオ」の圧勝でした。

(番外15):Q45&セルシオ編
(番外16):
Q45&セルシオ編

 今ではもう忘れられてしまいましたが、当時は日産とトヨタは国産の二大巨頭として、国内シェアを二分し、各セグメントで激しく鎬を削っていました。そんな中で、とてもいいクルマなのにどうしても頂点に昇り詰められなかった日産の「レパード」と、その越えられない大きな壁だった絶対王者のトヨタの「ソアラ」を、【前編】【後編】の2回に渡りご紹介します。

 今回【前編】では、まずは初代の対決について、お話しさせていただきます。

 なお本ブログは、私のつたない昔の記憶と、定期購読誌「国産名車コレクション」、「名車文化研究所」や自動車メーカーなどのサイト、を参考にして書いていることをご承知おきください。

2.まずは「レパード」がデビュー

 国内のスペシャリティーカー市場で、1979年3月登場した「3代目シルビア(S110)」が絶好調の中で、その上のクラスのスペシャリティーカーとして、「初代レパード」が1980年10月にデビューしました。

 エクステリアデザインはなかなか斬新で、2ドアハードトップに加え、4ドアハードトップ(当時日産が得意だったピラーレスではなく、ピラードハードトップでした)もラインアップされていました。特に4ドアは、6ライトウインドウの卓越したデザインで、特にCピラーからリアにかけてのガラス面の処理は際立っていました。

「初代レパード」の外観:上が4ドア、下が2ドア(パワポで作成)
「初代レパード」の外観:
上が4ドア、下が2ドア(パワポで作成)

 インテリアデザインも、前述の「3代目シルビア」や「5代目セドリック(430)」の流れを汲み、なかなかセンス良く、かつ上質な素材で、上級スペシャリティーカーらしく仕上げられていました。

 装備類は、マルチ電子メーター(ゲージ類のみデジタル表示)やドライブコンピューター(電卓に毛が生えた程度(すいません))、そして極めつけ(?)はワイパー付きフェンダーミラーなどなど、先進装備が満載でした。

 ただエンジンは既存の直列6気筒SOHCの2.8リッターL28E(145馬力)と2.0リッターL20E(125馬力)、そして何を思ったのか直列4気筒SOHCの1.8リッターZ18(105馬力:E(電子制御)かS(シングルキャブ)かは不明)まで搭載されていました。

 当時は「ローレル」にも「スカイライン」にも1.8リッターエンジンが搭載されていたので、これが日産のこのクラスの定番ラインアップだったのかもしれません。でも上級スペシャリティカーの「レパード」のエンジンフードを開けたときに、中から直列4気筒エンジンが出てきたら少しクスッとしそうですね。

3.完璧な装いで「ソアラ」がデビュー

 「初代レパード」から遅れること5ケ月、1981年2月に「初代ソアラ」がデビューしました。エクステリアはオーソドックスで万人受けする2ドアクーペでしたが、中身は「初代レパード」を見てから開発したのではと思えるほど(車の開発は5か月ではできませんが。。。)、すべてにおいて秀でていました。

 「初代ソアラ」は、主だったところで
・エンジンは「初代レパード」のような在り物エンジンではなく、「初代ソアラ」のために開発された直列6気筒DOHCの2.8リッター5M-GEU(170馬力)
・メーターは「初代レパード」のような一部デジタルではなく、LEDと蛍光表示管を使った国産車初のフルデジタルメーター(オド・トリップメーターは機械式)
・エアコンパネルは「初代レパード」の従来からあるプッシュボタンとレバー式ではなく、タッチパネル式
を採用していました。

 ただタッチパネルはスマホでは当たり前、最近はクルマでも採用が進んできていますが、ドライバーが盲牌(もうぱい:SWを見なくても凹凸で判別可能)できないので、個人的には車のUI(User Interface)としては、あまり適切ではないという持論を持っています。

「初代ソアラ」の外観(国産名車コレクション付録ミニカー)
「初代ソアラ」の外観(国産名車コレクション付録ミニカー)

4.デジタルメーター元年

 デジタルメーターは、古くはシトロエンが機械式のデジタルスピードメーター、そして電子式のデジタルメーターはアストンマーチンの「ラゴンダ」が先行して採用していますが、本格的化したのは、「初代レパード」と「初代ソアラ」からではないかと思います。

 前述の通り「初代レパード」は、デビュー当初はアナログ式のスピードメーターとタコメーターの間に、燃料計や水温計などのゲージ類を切り替え式でデジタル表示するマルチ電子メーターを採用していました。

 これはこれで先進装備であったことは間違いないのですが、「初代ソアラ」が本格的なデジタルメーターを採用してきたので、急遽「初代レパード」は本格的なデジタルメーターを開発する必要(ひょっとしたら開発中でデビューに間に合わなかったのかもしれません)に迫られました。

 そして、「初代レパード」はデビューからわずか10ケ月、「初代ソアラ」のデビューから5ケ月で、本格的なデジタルメーターを投入してきました。激しくお尻を叩かれた開発者の方々のご苦労をお察します。

 ただタコメーターは「初代ソアラ」のようなLEDではなく、こじんまりとした蛍光表示管だったので、視認性に難があったのと、スペースに余裕が出き過ぎて、なんと機械式のオド・トリップメーターを格上げしてレイアウトし、それでも余ったスペースは「TURBO」などの文字で埋められていました。

 その後「初代ソアラ」が、タコメーターなどのデザイン変更やトリップメーターを電子化し(オドはまだ機械式)、最後の最後に「トヨタ エレクトロ マルチビジョン」なる、6インチCRT(ブラウン管)ディスプレイをメーターの中にぶち込んできました。こうなると「初代レパード」は、もう口を開けてみているしかなかったようです。

「初代レパード」と「初代ソアラ」のメーターパネル(パワポで作成)
「初代レパード」と「初代ソアラ」のメーターパネル(パワポで作成)

5.両車の主要諸元

 「初代レパード」と「初代ソアラ」の主要諸元を下表に示します。当時はまだ上級スペシャリティカーでも5ナンバー枠で造られていたので、ボディサイズはほぼ同じです。

 エンジンでは当初「初代ソアラ」の後塵を拝した「初代レパード」でしたが、その後2.0リッターターボのL20ET(145馬力)、3.0リッターV6ターボのVG30ET(230馬力)で応戦しました。

 馬力攻めしてくる日産に対し、「初代ソアラ」は王者の貫禄で、上級スペシャリティカーは馬力だけじゃないよと言わんばかりに、2.8リッターから3.0リッターに排気量アップした6M-GEU(190馬力)を投入しただけでした。

 そして両車の対決は、「初代ソアラ」の圧勝で幕を閉じました。

「初代レパード」と「初代ソアラ」の主要諸元

6.おわりに

 以上が、「初代レパード」と「初代ソアラ」の対決のお話になります。次回【後編】では、「2代目レパード」と「2代目ソアラ」の対決をお話しする予定です。

 「2代目レパード」は、相当気合を入れて造られていましたが、詰めが微妙に甘く残念ながら「2代目ソアラ」の前に出ることはできませんでした。そしてビッグマイナーチェンジで、市場のネガと「2代目ソアラ」に劣っているところをすべて排除した、完璧な上級スペシャリティーカーに昇華しました。

 2代目の対決の結末はいかに。。。

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