親父の車遍歴:番外11(新生GT-R編【前編】:筋肉質のたくましい姿でよみがえりました。)

2024年2月23日

1.はじめに

 本編(その9):ローレル(C33)編で、バブルの時代に輝いていた日産車たちをご紹介しました。その中から、多くの期待を集めて衝撃的な復活を遂げた「8代目スカイライン(R32):以下R32」の「GT-R」と、そのあとに続く「9代目スカイライン(R33):以下R33)」「10代目スカイライン(R34):以下R34)」の「GT-R」の、3代に渡る「新生GT-R」を、【前編】【後編】の2回に渡りご紹介したいと思います。

 今回【前編】では、「新生GT-R」の一番手となる「R32 GT-R」を中心ご紹介します。

本編(その9):ローレル編
本編(その9):
ローレル編

 なお本ブログは、私のつたない昔の記憶と、定期購読誌「国産名車コレクション」、「名車文化研究所」や自動車メーカーなどのサイト、を参考にして書いていることをご承知おきください。

2.「R32 GT-R」鮮烈デビュー

2-1)伝統を引き継ぐエンジン

 本編(その8):R30編で、「GT-R」の復活かと噂され、4バルブDOHCエンジンではあったものの、なぜか6気筒ではなく、4気筒の「FJ20」エンジンを搭載した「RS」が登場したというお話をしました。

本編(その8):R30編
本編(その8):
R30編

 それから8年の時を経た、1989年5月の「R32」がデビューしたときに、「R32 GT-R」は、その存在が明らかにされました。こんどこそは皆が待ちに待った正真正銘の直列6気筒4バルブDOHCエンジンを搭載した「GT-R」でした。ただ販売が開始されたのは、その3ケ月後の1989年8月からで、どうやらその直前までチューニングがなされていたようです。

 搭載されたエンジンは「RB26DETT」で、2600㏄の直列6気筒4バルブDOHCエンジンをツインターボで武装した、自主規制上限の280馬力の最強エンジンでした。 どうせ2600㏄で、自動車税の区切りが1ランク上がっているのであれば、3000㏄すれすれの排気量でもいいのでは、とド素人の私は思いましたが、この「R32 GT-R」は、「GC10:以下ハコスカ」「GC110:以下ケンメリ」の「元祖GT-R」たちと同様に、レースで勝つために開発された車でした(「ケンメリ」は諸事情によりレースには出ていませんが。。。 )。

 当時のグループAのレギュレーションでは、ターボ車の排気量は、もともとの排気量の1.7倍相当とされていました。したがって排気量を3000㏄すれすれにすると1.7倍されて、最低車両重量とタイヤ幅既定の区切りとなる4500㏄を大きく超えてしまうので、その範囲に収まる排気量として2600㏄を選択したようです。

 ちなみに開発当初は、排気量を2350㏄にして、さらに下の4000㏄切りを狙ったようですが、エンジンパワーや、規定されるタイヤ幅が十分でないということで、見送られたようです。レースで勝つ車を造るこということは、本当に大変なんですね。

2-2)四輪駆動!

 そのころは「四輪駆動:以下4WD(Four Wheel Drive)」というと、スキーにでも行くんかい、と聞かれるほどクロカン(クロスカントリー)系のイメージが強かったです。

 ラリーの世界ですでに「アウディ クワトロ」が「4WD」で参戦し、華々しい成績を残していましたが、サーキット走行を想定とした「4WD」は、少し前に「ポルシェ959」が出たばかりで、まだまだめずらしい時代でした。

 そんな時代に「R32 GT-R」は「4WD」で登場しました。

雪山で戯れる当時のクロカン系4WDの代表格 「トヨタ ランドクルーザー」(左)と「三菱 パジェロ」(右)
雪山で戯れる当時のクロカン系4WDの代表格 「トヨタ ランドクルーザー」(左)と「三菱 パジェロ」(右)

 「R32 GT-R」の心臓部である「RB26DETT」エンジンは、レース用にチューンするとゆうに600馬力を出すことができたようで、それを路面に確実に伝えるには「4WD」が必要と判断されたようです。

 もちろん「4WD」といっても、前述のクロカン系の「2WD(Two Wheel Drive)」と「4WD」を手動で切り替える、前後輪の回転差を吸収するセンターデフを有しない「ポートタイム方式」ではなく、電子制御で綿密に前後の駆動トルクの配分を行う「フルタイム方式」を採用していました。

 このシステムは、既に「ブルーバード(U12)」に搭載されていた「アテーサ」というシステムを、より高性能化したシステムで「アテーサE-TS」と呼ばれていました。「アテーサ」は英語のWordのかしら文字をつなげた造語ですが、日産の新しいのフルタイム4WDの総称で、「E-TS」は電子制御で最適なトルク配分を行うシステムという意味だったと思います。

 ちなみ少し脱線しますが、「パートタイム方式」の場合に、「4WD」を選択して摩擦係数の大きな舗装路などで旋回しようとすると(もともと摩擦係数の小さい雪道や悪路の走行を想定しています)、前後輪の回転差を吸収する機能が無いので「タイトコーナーブレーキング現象」が発生し、タイヤが苦しそうな音を出したり、最悪エンストを起こしたりします。

 以前知人の「トヨタ ランドクルーザー」運転したことがあり、興味本位で「4WD」を選択し、舗装路で旋回しようとしたところ、タイヤがとても悲しい音を奏でたのですぐにやめたことがあります。

前回【前編】:「プレリュード」のご紹介
(番外7):
シルビア(S13)編

2-3)四輪操舵!

 (番外7):シルビア(S13)編で、「ホンダ プレリュード」の機械式の「四輪操舵(以下4WS:Four Wheel Steering)」と、日産の「7代目スカイライン(R31)」の世界初の電子制御「4WS」となる「HICAS」というシステムをご紹介しました。

 そして「R32 GT-R」には、その「HICAS」をさらに進化させた「スーパーHICAS」が搭載されていました。「HICAS」は後輪を前輪と同位相に動かすことで、コーナーリング性能を向上させていますが、「スーパーHICAS」は、ステアリングを切った最初の一瞬だけ後輪を前輪の逆位相に動かすことで、回頭性を格段に向上させ、よりコントロールし易い車に仕上げられていました。

 これは、(番外7):シルビア(S13)編でお話しした、「ホンダ プレリュード」の小回りを利かせるための逆位相とは、別次元のお話になります。

【参考情報】
・アテーサ(ATTESA)E-TS: Advanced Total Traction Engineering System for All Electronic – Torque Split
・HICAS: High Capacity Actively Controlled Suspension

2-4)オーバーフェンダーは?

 前後のフェンダーをえぐり、ワイドタイヤの装着を可能としたオーバーフェンダーが、「元祖GT-R」たちのベース車との差別化アイテムのひとつになっていました。ただ「R32 GT-R」がデビューするころは、さすがにオーバーフェンダーは昭和レトロアイテムになっており、「新生GT-R」が、どうやってベース車と差別化してくるのか楽しみでした。

 そして「R32 GT-R」は、オーバーフェンダーではなく、なんとも筋肉質なブリスターフェンダーをまとうことで、「GT-R」の伝統をしっかりと踏襲してきました。リアスポイラーも、いままで市販車では見たことがないほど大型で、がっしりとした骨太なデザインでした。

 「R32 GT-R」が前方から近づいてくると、オーバーフェンダーが無くても、そのボディビルダーのように鍛え抜かれたボディシルエットで、一目で分かりました。

「元祖GT-R(ハコスカ)」(上)と「」新生GT-R(R32)」(下)の「GT-R」らしさ比較
「元祖GT-R(ハコスカ)」(上)と「新生GT-R(R32)」(下)の「GT-R」らしさ比較

2-5)装備は快適でも

 「元祖GT-R」は、そのままレースに出走することが前提で造られていたので、レースに必要のないカーオーディオ、ヒーター、リアデフォッガー、リクライニングシート、着色ガラスなどはすべて排除されており、公道を走るにはとても不向きな車に仕立てられていました。

 それに対し「R32 GT-R」はオートエアコン、カーオーディオ、パワーウインドウなどの、高級車には不可欠な装備に加え、バケットシートもリクライニング機構がついており、快適なドライブが約束された車でもありました。

(番外9):フェアレディZ(Z32)編【前編】
(番外9):
フェアレディZ(Z32)編【前編】

 そんな快適装備を身につけていても、発売当時、カー雑誌などのテストでは、軒並み0-400m加速で13秒を切っており、いきなりその圧倒的なパフォーマンスを見せつけてくれました。(番外9):フェアレディZ(Z32)編でご紹介した、「TOYOTA3000GT」の「XXから数えて3代目スープラ」でさえ14秒台だったころに、「R32 GT-R」はいきなり13秒を切ってしまいました。

 ほぼ同じ時期(1ケ月前)に発売した「4代目フェアレディZ(Z32):以下Z32」とは、好勝負だったようですが、最高速は「Z32」、0-400m加速は「R32 GT-R」に軍配が上がっていました。

 「元祖GT-R」の時代とは違い「新生GT-R」の「R32 GT-R」は、快適装備を身につけて多少重量が増しても、そんなものには物ともしないほどの圧倒的なパフォーマンスを有していました。

「R32 GT-R」外観(NISSAN MODEL CAR COLLECTION ミニカー)
「R32 GT-R」外観(NISSAN MODEL CAR COLLECTION ミニカー)

3.おわりに

 以上が、「R32 GT-R」のご紹介になります。価格は「元祖GT-R」と同様でなかなか高価でしたが、バブル景気にも後押しされ、「GT-R」としては考えられないような販売台数を記録しました。前述の通りそのボディビルダーのように鍛え抜かれたボディシルエットがとても目立つので、街中でもけっこうな台数を見かけました。

 そして「新生GT-R」は、「元祖GT-R」の2代を追い越し、「R33」「R34」と3代に渡り続きました。次回【後編】では、基幹システムは「R32 GT-R」を踏襲しながらも、確実に進化を遂げていった「R33 GT-R」「R34 GT-R」をご紹介したいと思います。

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