我が青春を彩ったクルマたち:その3(初代セリカ編【後編】:みんなグレードは[ST]でした。)

1.はじめに

 前回【前編】では、未来の国からやってきた「セリカ」のクーペとリフトバックの車両概要をご紹介しました。

(その2):初代セリカ編【前編】
(その2):
初代セリカ編【前編】

 今回【後編】では、多くの友人が乗っていた「セリカ」の中から、特に親しかった2人の友人の「セリカ」+ 洗友(?)のお話をしたいと思います。

 なお本ブログは、私の学生時代のつたない記憶と、定期購読誌「国産名車コレクション」、「名車文化研究所」や自動車メーカーなどのサイト、を参考にして書いていることをご承知おきください。

2.友人の「セリカ」たち

2-1)2台ともグレードは[ST]

 特に親しかった2人の友人の乗っていた「セリカ」は、2台ともクーペで、グレードは[ST]でした。そういえば当時の「セリカ」はほとんどが[ST]で、たまに偉そうに走る[GT]を見かけるといった感じで、それ以外のペラペラのフェンダーミラーをつけた、いかにも廉価グレードの面持ちの[LT][ET]はほとんどお目にかかることはありませんでした。

 [ST]は、1.6リッター直列4気筒OHVエンジンをツインキャブレター(ソレックスではありません)で武装した(2T-B型:105馬力)で、DOHCエンジンの[GT]には及ばないものの、そこそこスポーティな走りが楽しめるクルマでした。

 いろいろと調べてみましたが、[ST]と[GT]との価格差は正確には確認できませんでした。ただ少なくとも「ハコスカ」「ケンメリ」の[GT]と[GT-R]のような、極端な価格差(1.5倍以上)はなく、一般的な1グレードの価格差に毛が生えた程度だったと記憶しています。

 ではなぜ[ST]が多かったかというと、勝手な想像ですが、どう猛な[GT]より[ST]のほうが、エレガントな「セリカ」のイメージにマッチし、そこそこ走りもよく、自分の好みでいろいろと選んで楽しめる【前編】でお話ししたフルチョイスシステムが適用されていたことが([GT]は適用外だったようです)、好まれたのかもしれません。

友人2人が乗る「セリカ」のイメージ(パワポで作成)
友人2人が乗る「セリカ」のイメージ(パワポで作成)

2-2)さすが低年式車

 ひとりの友人の「セリカ」は、確か発売直後の1971年式で、すでに10年近い年月が経過していました。外装はそのルックスの良さも手伝って、そこまで古臭さは感じませんでしたが、内装のインパネやシートは結構年季がはいっており、特に驚いたのはハンドルの一部が欠けていたことです。

 とりあえず欠けていたのはプラスチックのカバー部分のみだったので、友人は “こんなぐらい大丈夫だ!" と普通に運転していましたが、いくら低年式の中古車とはいえさすがに今の時代では、この状態で売られることはないと思いました。

 ただひょっとすると買ったときはまともで、短気で投げやりな友人(高校時代やり投げの選手だったようです)が、怒りのクラクションを鳴らそうとして、勢い余って壊してしまったのかという疑惑も持ち上がっていました。

友人の「セリカ」の一部欠けたハンドルのイメージ(パワポで作成)
友人の「セリカ」の一部欠けたハンドルのイメージ
(パワポで作成)

2-3)2ストロークエンジン?

 もうひとりの友人の「セリカ」は、もう少し年式は新しくとりあえず内外装ともに普通でした。

 当時私たちは人里離れたところに住んでいたので、ほとんどみなが学生寮に入っていました。そして週末になると、その寮の駐車場にみんな集まってきて、洗車したりクルマいじりをしたりして遊んでいました。もちろんオイル交換も、ホームセンターでオイル缶を購入し、自分たちでやるのが当り前でした。

 みんなにわか仕込みのクルマの知識で、自分のクルマをいじり倒していたので、たまに誤った作業をすることもありました。そしてもうひとりの「セリカ」の友人はなんと、入れたオイルの量をオイルゲージではなく、オイルの注入口から中を覗き込んで、満杯になるまで入ようとしていました。

 私はその近くで我が愛車「ケンメリ」をピカピカに磨き上げていたところでしたが、その友人が “まだ満杯にならない" といいながらオイルを入れているのを見て、その異変に気付きました。そして時すでに遅し、その友人の「セリカ」は、大量のオイルを飲み干して満腹の状態になっていました。

 その友人は、そのあと用事があり急いでいたらしく、入れ過ぎたオイルを抜くことなく走り出し、その友人の「セリカ」は飲み過ぎたオイルを燃やしながら、まるで2ストロークエンジンのバイクのように煙を巻き散らせながら走り去っていきました。

煙を巻き散らせながら走り去る友人の「セリカ」のイメージ(少し誇張しています。)
煙を巻き散らせながら走り去る
友人の「セリカ」のイメージ(少し誇張しています。)

2-4)リフトバックとの洗車合戦

 クラスが違ったので普段はそれほど親しくはありませんでしたが、駐車場でだけ親しい(意識し合う)洗車友だち(以下洗友)がいました。その洗友は当時クーペばかりだった「セリカ」の中で、めずらしくリフトバック(以下セリカLB)に乗っていました。

 あとから追加された「セリカLB」は、まだ高年式でそれほど安くなかったので、貧乏学生にはなかなか手が出せませんでした。ちなみにグレードはお約束の[ST]でした。

 その洗友の「セリカLB」のボディカラーは、我が愛車「ケンメリ」と同じくホワイトということで、学生寮のいつも止める駐車場の中で、低年式で塗装もくたびれたクルマがほとんどという中で、我が愛車「ケンメリ」と、この「セリカLB」の2台だけはいつも張り合いうように白く光り輝いていました。

 もちろん駐車場には屋根など付いていないので、その輝きを保つために互いに休日になると駐車場に付設された水道の蛇口に、自前のホースを差し込んで日が暮れるまでピカピカに磨き上げていました。

 その洗友は、私が「ケンメリ」を大切にしていたのと同じぐらい「セリカLB」を大切にしていたので、ひょっとすると私と同じように、今でもそのに「セリカLB」に乗っているのかもしれません。

駐車場で洗車する「セリカLB」と「ケンメリ」のイメージ(2台とにボディカラーはホワイトでした。)
駐車場で洗車する「セリカLB」と「ケンメリ」のイメージ(ボディカラーは2台ともホワイトでした。)

3.「セリカ」の主要諸元(パート2)

 【前編】に続き、下表に「セリカ」クーペの1.6リッターの[ST]と[GT]、そして「セリカLB」の2.0リッターの[GT]の主要諸元を示します。

友人の「セリカ」と「ケンメリ」のシグナルグランプリのイメージ
友人の「セリカ」と「ケンメリ」の
シグナルグランプリのイメージ

 友人たちの[ST]は車重が軽いので、[GT]には及ばないもののパワーウエイトレシオは8.5を下回っており、我が愛車「ケンメリ」の9.2より優秀な数値を示していました。

 ただ友人たちの[ST]は高齢化が進んでおり、キャブレターの調整もいい加減だったので、シグナルグランプリでは我が愛車「ケンメリ」の勝ちでした。

 さすがに[GT]となると、1.6リッターだとちょい負け、2.0リッターだとあっという間に姿が消えていきました。ちなみにこの[GT]たちの持ち主は知らない人たちで、たまたま信号で隣にならんだだけでした。当時はこんなことがよくありました(よい子は絶対に真似をしてはいけません!)。

「セリカ」クーペの1.6リッターの[ST]と[GT]、そしてLBの2.0リッターの[GT]の主要諸元

4.おわりに

 以上が【前編】【後編】の2回に渡る、未来の国からやってきて、少年の心までも鷲づかみにした「セリカ」のご紹介になります。

 この「セリカ」は【前編】でお話ししたように販売台数が多く、カッコよくてお手頃ということで、私たち貧乏学生だけではなく、なんとか族というクルマのボディを派手な色で染め上げて爆走する人たちにも、我が愛車「ケンメリ」の低年式車と同様に絶大なる人気がありました。

 そして、カラフルなボディと、けたたましい爆音で、真夏の熱い夜を、さらに暑苦しくしていました。

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 我が愛車ケンメリとの様々なエピソードや、私の記憶の中にしっかりと刻まれている数々の往年の名車たちをご紹介していますので、ぜひご覧になってください。

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