特急「ひだ」号の新型車両「HC85系」をたった660円で堪能しました。
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1.はじめに
先日のGWに我が故郷岐阜に帰省したときに、「ALWAYS New HIDA!」という特急「ひだ」号のすべての定期列車が新型車両「HC85系」になったというポスターが、JR名古屋駅(以下名古屋駅)やJR岐阜駅(以下岐阜駅)のいたるところに貼ってありました。
ちょっと気になりましたが、さすがに高山まで行く予定はないということで、見るだけで終わりました。神と呼ばれている某有名交通系ユーチューバーが少し前に紹介していたので、「HC85系」が導入されたことは知っていましたが、なかなか自分が乗る機会はないだろうと思っていました。
とはいえ少し気になったので乗換案内アプリで調べてみると、JR鵜沼駅(以下鵜沼駅、岐阜市のとなりの各務ヶ原市の西のはずれの町です)に停車する「HC85系」が1日3本(2023年5月現在)あり、料金も660円(乗車券:330円、特急券:330円)ということが分かりました。
ということで、今回は「HC85系」と岐阜駅~鵜沼駅間の小旅行のご紹介をします。
2.お得な特急券
なぜ特急券がこんなにお得になっていたかというと、新幹線の隣接駅間や、在来線特急の全国の何箇所かでは、通常の自由席特急料金よりお得な「特定特急券」が設定されており、今回乗車した「HC85系」の走る高山線の岐阜駅~猪谷駅間にも、その「特定特急券」が適用されていました。
右表の通り、通常の特急料金は最低区間が50キロまでで760円に対し、特定特急券だと30キロまでで330円と、かなりお得に乗ることができるようです。
3.岐阜駅から乗車
3-1)「織田信長公」ゆかりの地
「HC85系」には、岐阜駅から乗車しました。岐阜駅はその北口を出ると、威風堂々とした黄金に輝く「織田信長公」の像が、目に飛び込んできます。戦国時代に「織田信長公」は天下取りに備え、岐阜市内にある金華山の山頂に築かれた難攻不落といわれた岐阜城に居を構えた時期があり、岐阜とは深いかかわりがあります。
3-2)昔は路面電車が走っていました
前述の「織田信長公」の像の近くに、路面電車「丸窓電車モ513」が展示されていますが、こちらはほんの20年ほど前までは市内を現役で走っていました。残念ながら路面電車は運用コストの面と、渋滞の原因になるということで、全国の各都市から姿を消していき、それは時代の流れとして致し方なしと思っていました。
そのような絶滅危惧種に指定された路面電車ですが、現在まだ全国に22路線が残っているようです。その中でも岐阜市と同じぐらいの規模の都市、松山市、高知市、富山市では、路面電車を観光の目玉として(もちろん市民の足としても)残し、メジャーな観光地として堂々と君臨しています。
もしこの路面電車が残っていれば、いまいち伸び悩む岐阜市をひょっとしたらメジャーな観光地に押し上げてくれたのではと、少し妄想にふけってしまいました。
4.「HC85系」に乗車
4-1)ホーム上の乗車案内
岐阜駅の高山線のホームに上ると、まず「HC85系」の車両の編成と乗車位置の案内がありました。「HC85系」は臨時列車を除くと、1日に12本(10両編成:1本、8両編成:7本、4両編成:4本)で、だいたい1時間に一本走っていました。
私はこの中の「ひだ15号」岐阜駅16:25発の自由席に乗りました。車両編成は4両の一番短い編成で、自由席は4号車、高山方面の先頭車両でした。高山線はこの岐阜駅でスイッチバックする運行になっているので、名古屋駅を発車する時は1号車が先頭車両、岐阜駅からは4号車が先頭車両となります。
4-2)「HC85系」が入線
発車時間が近づくと、静かに「HC85系」がホームに入ってきました。「にわか鉄道マニア」としてベストショットを狙って先頭で待ち構えたつもりだったのですが、音もなく「本物の鉄道マニア」がやってきて、私より前でちゃっかりと「HC85系」の雄姿をカメラに収めていました。
4-3)「HC85系」の車内
いざ「HC85系」に乗り込むと、半分弱の乗車率で横2席を占有することができました。車内案内表示を見ると、行き先と交互に簡易的なハイブリッドシステム図が表示されていました。
普通車のシートは、新幹線の「N700S」と同じような形状で、オレンジ色のビビッドなカラーリグでした。コンセントはひじ掛けの所にあり、全席に装備されていました。気になってグリーン車のシートもチラ見しましたが、色はブルー系で普通車と同じく横2列2列、形状まではよく分かりませんでしたが、普通車に比べると少し厚みがあったような気がしました。
化粧エリアも、シートと同様に新幹線の「N700S」と同じような造りですが、手すりや壁が木目調になっており上質感を演出していました。壁には沿線の工芸品が展示してあり、JR東海のこの車両への力の入れようを感じ取ることができました。
4-4)「HC85系」のハイブリッドシステム
「HC85系」の最大の特徴は、新型のハイブリッドシステムを採用していることで、安全性・快適性の向上や環境負荷の低減などを図りつつも、ハイブリッドシステムの鉄道車両として国内初の最高速度120km/hでの営業運転を実現しています。
「HC85系」のハイブリッドシステムの基本構成は、下図(左)のエンジンは発電機を回すためのみに使われ、その発電した電力とバッテリーに蓄積された電力でモーターを回して車輪を駆動する「日産 e-POWER」と同じ構成となります。ただしバッテリーの充電は、「日産 e-POWER」はエンジンと回生ブレーキの両者で行っているのに対し、「HC85系」は回生ブレーキのみとなっています。
ちなみに回生ブレーキとは、車両の減速時にモーターが発電機代わりとなり、電力を生み出してバッテリーに充電することをいいます。
4-5)意外と聞こえるエンジン音
前述の通り、「HC85系」のハイブリッドシステムは、バッテリーの充電を回生ブレーキのみで行っています。高山からの上り列車は飛騨川沿いに長い下り坂を降りてくるので、回生ブレーキだけでもそれなりにバッテリーを充電できるのかもしれません。
ただ名古屋を出てまもない下り列車のバッテリーの充電は十分ではないらしく、岐阜駅を発車するとエンジンを元気よく回して発電してモーターを回すので、それなりに威勢のいいディーゼル音が車内からでも聞こえました。
残念ながら「にわか鉄道マニア」なので、前型「キハ85系」には乗ったことがなく、新旧比較ができません。ただ私の記憶に残っているディーゼル車両と比べると、加速時のディーゼル音はギアチェンジの継ぎ目が無いこと以外は、多少マイルドになっているものの、あまり変わらないような気がしました。(期待が大きすぎたのかもしれません)
4-6)「HC85系」に別れを告げる
20分ほどで鵜沼駅に到着しました。途中の駅で2回ほどすれ違いのために停車(高山線は単線です)したので、実のところ各駅停車と所要時間は同じぐらいでした。
私の「HC85系」のプチ乗車体験はあっという間に終わり、「HC85系」は飛騨川沿いの険しい飛騨路に向かって走り去っていきました。ここからがまさに「HC85系」が本領を発揮する区間で、ここまでは助走区間だったのかもしれません。
5.JR&名鉄の鵜沼駅
実のところ、鵜沼駅で降りたのは今回が生まれて初めてです。せっかくなので構内を少し散策すると、JR鵜沼駅と新鵜沼駅(名鉄)が空中歩道という長大な通路で結ばれており、JRと名鉄の線路で分断された駅の北側と西側を自由に行き来できるようになっていました。空中歩道にはあまり人気(ひとけ)はありませんでしたが、地元のマダムが優雅に自転車で走り抜けていく姿を目撃しました。
北口の駅前には、わりと広いロータリーがありましたが、お店などはまったくなく、のどかな風景が広がっていました。この鵜沼の町は、昔は中山道の宿場町として栄えましたが、名鉄で30分~40分で名古屋に出られるので、今では名古屋のベッドタウンになっているようです。
6.帰りは「キハ75系」で
帰りは各駅停車に乗りました。ホームで待っていると、生粋のディーゼル車両の「キハ75系」がやってきました。この車両は、伊勢路で近鉄特急としのぎを削り合っている、快速「みえ」号でも使っている高性能ディーゼル車両です。
豪快なディーゼル音と共にグイグイと車両を引っ張る加速力は、ひょっとすると我が愛車「ケンメリ」を上回るのではないかと思えるほどでした。
さすがに「HC85系」に比べると、容赦なくディーゼル音が車内に飛び込んできますが、そもそもこのディーゼル音が好きな私にとっては、車窓から見える夕日に照らされる山並のBGMになってくれました。
7.各車両の主要諸元
「HC85系」「キハ85系」「キハ75系」の主要諸元を下表にしまします。「キハ85系」「キハ75系」は、座席が特急仕様と快速仕様で異なる以外は、駆動方式を含めてほぼ同じです。最高速度も120Km/h と同じで、今後「HC85系」のようなハイブリッド車両に移行していくと考えると、JR最後の高性能ディーゼル車両になるのかもしれません。
8.おわりに
以上が、「HC85系」と岐阜駅~鵜沼駅間の小旅行のご紹介になります。たった660円、2時間ほどの小旅行でしたが、ずいぶん中身の濃い時間を過ごすことができました。
これからは我が愛車ケンメリをはじめとしたクルマ(旧車)のご紹介だけではなく、機会があれば今回の「HC85系」のような話題の鉄道車両などもご紹介していけたらと思います。
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